「メンタルが強い子」って、どんな子だろう。〜育成年代で大切にしたい自信・挑戦・立ち直る力〜

子供のサッカーに関わっている中で、「メンタルが強い」「気持ちが弱い」という言葉をよく耳にします。

私も、サッカーやスポーツにおいてメンタルは、技術と同じくらい大切な要素だと考えています。

今回のコラムでは、「育成年代のメンタルの育み方」というテーマについて掲載します。

目次

そもそも、「メンタルが強い」とは?

そもそも「メンタルが強い」って、どういうことなのでしょう?

負けても泣かないことなのか。

ミスしても落ち込まないことなのか。

球際で絶対に負けないことなのか。

もちろん、そういう部分もあると思いますが、それだけでは捉え方が狭いですよね。

また、このテーマにおいて重要なのが、

メンタルは、生まれつきの性格だけで決まるものではない。

ということです。

最初から「気持ちが強い子」ではなかった

「2才から小学生年代までのメンタルの変化」という点で、メイは面白いサンプルになるので題材として、以下共有します。

FC MONOでの今のメイだけを見ていると、もしかしたら意外に思う人もいるかもしれませんが、最初からメイは気持ちが強いタイプの子ではありませんでした。

先日、MONOのチームメイトの親御さんと雑談をした時も意外に思われました。

いま、FC MONOの試合では積極的にボールへ行きますし、球際でも厳しく戦う。

負ければ悔しがりますし、自信を持ってプレーをする場面もかなり増えてきました。

正直、親としてはまだまだ「メンタルの強い選手」とは一切捉えていなく、「もっと全体を鼓舞しろよ」「もっと要求しろよ」「もっとパッパパッパと切り替えろよ」「もっとこうしろああしろ」と強く思う事は度々度々度々度々度々度々度々度々度々度々度々度々度々度々ありますが(笑)、ただ、幼児期の頃と比べると、明らかに変わったとは思います。

小さな頃は全く「気持ちが強い方ではなかった」ので、2才から現在の8才になるまでの変化は、「子供の成長過程」としての指標としては面白いサンプルになるなと感じています。

メイは、小さな頃から今と変わらずすごく陽気なキャラではあったものの、年少さんで体操教室へ初めて行った時には、当時2歳だった妹のマオの後ろにくっ付いて教室へ入っていくような子(ちょっとビビり?)でした。

サッカーを始めたのも年少さんですが、最初の頃の試合では、ボールを積極的に奪いに行くというより、ボールを持っている選手の近くまでは行くものの、そこからガッと全く入っていかない。

少し離れたところからボールの動きを追いかけていて、半分審判をしているような感じでした(笑)

「あー、これ、サッカー向いてないかもな」と思った瞬間も、実は複数回あります。

もちろん、それだけで「メンタルが弱かった」と決めつけるつもりはありません。

小さい頃は初めての環境に慎重な子もいますし、成長のスピードも性格もそれぞれです。

ただ少なくとも、最初から競争心が前面に出るタイプでも、何にでも怖がらず飛び込んでいくタイプでもなかったです。

では、そこから何が変わったのか。

振り返ってみると、一つの出来事で急に変わったというより、何年もかけて積み重ねてきた経験が大きかったのかなと思っています。

ストライダーで経験した「自分で何とかする」

メイは2歳からストライダーを始めて、定期的に大会にも参加していました。

ストライダーの大会は、スタートラインに立ってしまえば親は何もできません。

  • 転んでも、自分で立つ。
  • 抜かれても、自分で追いかける。
  • 思ったような結果が出なくても、それを受け止める。
  • そして、また次のレースに出る。

もちろん勝った時は嬉しいですし、負ければ悔しい。

そういう経験を幼児期から何度もしてきました。

これが今の彼女のスポーツに取り組む際のメンタルにつながっていると証明することはできません。

ただ、親として見てきた感覚では、「自分で何とかしなければいけない場面」を何度も経験したことには、大きな意味があったのではないかと感じています。

サッカーでも同じです。

FC MONOで練習を続ける中で、

  • 今まで取れなかったボールを取れた。
  • できなかったプレーができるようになった。
  • 上の学年の選手とも少し戦えるようになった。
  • 試合で活躍できた。
  • 逆に、全然できなかった日もあった。

そういう小さな成功と失敗を、何年も積み重ねてきました。

その結果として、今ではFC MONOの2年生の中心選手の一人として、以前とはかなり違う気持ちで試合に入れるようになってきたと思います。

だから私は、

「メンタルが強い・弱い」は、子供に最初から与えられた固定的な性格ではない

と考えるようになりました。

「メンタルが強い=根性がある」ではない

スポーツ心理学で扱われる心理的な力は、一つではありません。

  • 自信
  • 集中力
  • モチベーション
  • 目標を設定する力
  • 緊張やストレスと付き合う力
  • 失敗から立ち直る力
  • 自分で考えて行動する力
  • 必要な時に周囲へ助けを求める力

こうした様々な要素があります。

ですので、

「泣いたからメンタルが弱い」

「緊張するからメンタルが弱い」

「ミスを怖がったからメンタルが弱い」

と考えるのは、少し違うのだと思います。

プロ選手だって緊張するでしょうし、負ければ悔しい。

大切なのは、そういう感情をなくすことではありません。

怖くても挑戦する。悔しくても次のプレーへ戻る。失敗しても、もう一度やってみる。

育成年代で育てたい「強さ」は、そういうものなのかなと思います。

「できた」の積み重ねが、自信になる

「自信」という観点についても、今回改めて考えてみました。

「自己肯定感を高めよう」という言葉はよく聞きます。

もちろん、子供が自分自身を肯定できることは大切です。

ただ、スポーツに関して自分が特に大切にしたいのは、

「自分はやれば少しずつできるようになる」という感覚です。

  • 昨日できなかったことが、今日は少しできた。
  • 強い相手から一回だけボールを取れた。
  • 今まで出せなかった声を出せた。
  • ミスした後、すぐ守備に戻れた。
  • 一度失敗したドリブルに、もう一度チャレンジできた。

こういう経験です。

成功体験というと、

  • ゴールを決めた。
  • 試合に勝った。
  • MVPになった。

という分かりやすい結果を考えがちです。

でも、それだけを成功の定義としてしまうと、サッカーをしている時間の大部分が「成功ではない時間」になってしまいます。

だからこそ、本人がコントロールできる小さな成長を、成功として認識できるようにすることが大切なのだと思っています。

これは、ただ「すごいね」と褒め続けることとは少し違います。

  • 自分が挑戦した。
  • できなかった。
  • 工夫した。
  • 少しできた。

その事実を本人自身が感じられること。

そういう経験の積み重ねが、本当の意味での自信につながっていくのだろう、と。

失敗させないことが、メンタルを育てるわけではない

親としては、子供が失敗する姿を見るのは、人によっては瞬間的には結構つらいものかも知れません。

  • 試合で全然活躍できない。
  • 強い相手に何もさせてもらえない。
  • 大事なところでミスをする。
  • 負けて泣く。

できればそんな思いをさせたくない、と思う人もいらっしゃると思います。

でも、失敗しないように大人が先回りし続けてしまえば、

「失敗した後にどうするか」

を経験する機会もなくなってしまいます。

とは言え、厳しい環境に放り込めばメンタルが強くなる、という話でもないと思います。

自分の中では、

崖から落として這い上がらせるのではなく、登れるか登れないかくらいの坂を一緒に登る。

このくらいの感覚が、育成年代にはちょうど良いのかなと思います。

  • 少し難しい。
  • 失敗する可能性もある。
  • でも、頑張ればできるかもしれない。
  • 失敗しても、また挑戦できる。

そういう環境を作ることが、大人にできることなのではないでしょうか。

「勝ちたい」という気持ちも大切にしたい

育成年代の話になると、

「勝ち負けは気にしなくていい」

という考え方もあります。

大人が勝敗だけを求めて子供にプレッシャーをかけることには、自分も賛成できません。

ただ、子供自身が「勝ちたい」と思うことまで否定する必要は全くないと思っています。

メイも以前より、かなり負けず嫌いになりました。

  • 試合に負ければ悔しい。
  • ボールを取られれば取り返したい。
  • 強い相手にも勝ちたい。

それ自体はとても良いことだと思っています。

JFAの育成に関する考え方としても、本気で相手と競うことや、できなかったことへ挑戦してできるようになることは、サッカーの「楽しさ」の一部として捉えられています。

大事なのは、

「勝てなかった自分には価値がない」

にしないこと。

「勝ちたい。だから、もっと上手くなりたい」

に持っていくことなのだと思います。

勝利を目指すことと、育成することは、必ずしも反対ではありません。

  • 本気で勝ちに行ったからこそ、負けた時に悔しい。
  • 悔しいから考える。
  • また練習する。
  • そして、できるようになる。

この経験も、育成年代の大切な成長だと思っています。

親として意識していること

私が子供たちとサッカーの話をする時に、意識していることがあります。

それは、改善してほしいところだけを伝えないことです。

例えば試合後に、

「なんであそこで戻らなかったの?」

から始めるのではなく、

「今日、前向いて仕掛けたところ良かったね。自分ではどうだった?」

と、まず良かったプレーについて話す。

本人がどう感じたのかも聞く。

そのうえで、

「一個だけ。パスを出した後に止まっている場面があったけど、次はどうしたらいいと思う?」

と聞いてみる。

私の中では、

良かったこと → 本人に聞く → 課題を一つ → 次どうするか

くらいが、今の年齢にはちょうど良いと感じています。

今回調べた研究でも、若年選手に対しては、親やコーチが強くコントロールすることより、子供自身の意思や選択を尊重する関わりが、モチベーションなどの面で重要であることが示されています。

だから、何も言わないことが正解だとも思いません。

一方で、全部大人が答えを教えることも違う。

子供が自分で答えを見つけるために、必要な時だけ少し手伝う。

親としては、そのくらいの距離感を大切にしたいと思っています。

ミスした時こそ「次に何をするか」を見る

サッカーでは必ずミスをします。

どれだけ上手な選手でも、ノーミスではプレーできません。

だから自分は、「ミスをするな」と言うよりも、

ミスした後に何をするか

を大事にしてほしいと思っています。

  • ボールを取られた。
  • そこで下を向くのか。
  • すぐ取り返しに行くのか。
  • シュートを外した。
  • そこで次から打たなくなるのか。
  • もう一度ゴールを狙うのか。
  • ドリブルで失敗した。
  • 次は安全なプレーだけを選ぶのか。
  • もう一度チャレンジするのか。

「メンタルの強さ」が見えるのは、成功した瞬間より、むしろこういう時なのかもしれません。

だから、

「ミスしても気にするな」

より、

「悔しくてもいいから、次に何をする?」

という考え方の方が良いと思っています。

落ち込まないことを求めるのではなく、落ち込んでも次の行動へ戻れるようになる。

それで十分なのだと思います。

大人が「メンタルを強くしよう」としすぎない

「メンタルが弱いからできない」

という言葉は、とても便利です。

球際に行けなかった。

「気持ちが弱い。」

シュートを外した。

「メンタルが弱い。」

強い相手に消極的になった。

「もっと気持ちを強くしろ。」

でも、本当は技術が足りなかったのかもしれない。

周りを見る余裕がなかったのかもしれない。

どうプレーすれば良いのか分からなかったのかもしれない。

単純に経験が足りなかっただけかもしれません。

そこを全部「メンタル」で片付けてしまうと、本当の課題を見失います。

そして何より、

「自分はメンタルが弱い子なんだ」

と本人が思ってしまうことは避けたいです。

メンタルを性格として決めつけるのではなく、

今はまだ、この状況への対応方法を知らない。

この経験がまだ少ない。

これから身につけていけばいい。

そのくらいに考えたいと思っています。

メイも、まだまだ途中

今のメイは、幼児期の頃と比べればかなり変わりました。

FC MONOの試合でも強い気持ちで戦えるようになりましたし、自分から勝ちたいという気持ちも出るようになりました。

でも当然、これで「メンタルが強くなったからOK」ではありません。

これからサッカーのレベルが上がっていけば、必ず、今までとは違う、より厳しい局面が訪れます。

  • 自分より圧倒的に上手な選手とプレーする。
  • 試合に出られない。
  • 選考に落ちる。
  • 怪我をして一定期間トレーニングができない。
  • 思ったように成長できない。
  • 大事な試合でミスをする。
  • 努力しても結果が出ない。

今まで経験していない壁や事柄はいくらでも出てきます。

その時にまた悩むでしょうし、落ち込むこともあると思います。

だからメンタルは、一度「強くしたら終わり」というものではないのでしょう。

成長するたびに新しい壁が出てきて、そのたびに自分なりの付き合い方を覚えていくもの。

私は今のところ、そんなふうに考えています。

「メンタルの強い選手」を作らなくてもいいのかもしれない

親が一所懸命に、直接的に「メンタルの強い我が子」を作ろうとしなくても良いのだろうと思っていますし、それは難しいと思います。

  • 失敗できる。
  • 悔しがれる。
  • もう一度やれる。
  • 分からなければ聞ける。
  • 自分で考えられる。
  • 勝ちたいと思える。
  • 負ければ悔しいと思える。
  • そして、またサッカーをやりたいと思える。

そんな経験ができる環境を、大人が作り続ける。

その中で少しずつ自信がつき、自分で考えられるようになり、失敗した時にも戻ってこられるようになる。

その結果として、周りから見た時に、

「あの子はメンタルが強いね」

と言われる選手になっていく。

順番としては、そちらなのかなと思います。

メイを見ていても、最初から強かったわけではありません。

ストライダーで転んだこと。

負けたこと。

勝ったこと。

サッカーでボールに行けなかったこと。

少しずつ行けるようになったこと。

試合で活躍できたこと。

全然できなかったこと。

そういうものを何年も積み重ねて、今があります。

そして、これからも続きます。

FC MONOでも、

「ミスするな」

ではなく、

「ミスした後、次に何をする?」

と言えるチームでありたいです。

「絶対に勝て」

ではなく、

「本気で勝ちに行こう」

と言えるチームでありたい。

負けたら悔しがっていい。

泣いてもいい。

でも、その経験を次にどうつなげるかを一緒に考える。

見る。

考える。

挑戦する。

失敗する。

また挑戦する。

その繰り返しの中で、技術だけではなく、心も一緒に育っていく。

育成年代だからこそ、今の勝ち負けだけではなく、5年後、10年後に、自分で考え、自分で立ち直り、自分から挑戦できる選手になること。

FC MONOとして、そんな育成をこれからも大切にしていきたいなと思っています。

参考文献・参考資料

本コラムの執筆にあたり、育成年代における心理的スキル、自信やモチベーション、失敗から立ち直る力、親・指導者の関わり方などについて、以下の研究・資料を参考にしました。

Dohme, L. C., Piggott, D., Backhouse, S., & Morgan, G. (2019).
“Psychological Skills and Characteristics Facilitative of Youth Athletes’ Development: A Systematic Review.” The Sport Psychologist, 33(4), 261–275.

若年アスリートの心理的発達に関する25本の実証研究を整理したシステマティックレビュー。目標設定、セルフトーク、自信、集中、モチベーション、周囲へ助けを求める力など、育成を支える心理的スキル・特性について参考にしました。

論文(DOI)


Gao, Z., Chee, C. S., Norjali Wazir, M. R. W., Wang, J., Zheng, X., & Wang, T. (2024).
“The role of parents in the motivation of young athletes: a systematic review.” Frontiers in Psychology, 14, 1291711.

若年アスリートに対する親の関わりを整理したシステマティックレビュー。自律性を支える関わり、適度な親の関与、良好な親子関係、結果だけではなく成長を重視する環境などについて参考にしました。

論文全文


Balaguer, I., Castillo, I., Cuevas, R., & Atienza, F. (2018).
“The Importance of Coaches’ Autonomy Support in the Leisure Experience and Well-Being of Young Footballers.” Frontiers in Psychology, 9, 840.

若年サッカー選手を対象に、選手自身の意思や選択を尊重する「自律性を支えるコーチング」と、内発的モチベーションや心理的欲求の充足などとの関係を検討した研究です。

論文全文


Walter, N., Nikoleizig, L., & Alfermann, D. (2019).
“Effects of Self-Talk Training on Competitive Anxiety, Self-Efficacy, Volitional Skills, and Performance: An Intervention Study with Junior Sub-Elite Athletes.” Sports, 7(6), 148.

ジュニア・サブエリート選手を対象に、セルフトークと競技不安、自己効力感などとの関係を検討した介入研究。対象年齢が小学校低学年より高いため、本コラムでは低学年にそのまま当てはめず、参考として扱っています。

論文全文


Amado, D., Sánchez-Oliva, D., González-Ponce, I., Pulido-González, J. J., & Sánchez-Miguel, P. A. (2015).
“Incidence of Parental Support and Pressure on Their Children’s Motivational Processes towards Sport Practice Regarding Gender.” PLOS ONE, 10(6), e0128015.

親からのサポートやプレッシャーと、子どもの心理的欲求やスポーツへのモチベーションとの関係について参考にしました。

論文全文


公益財団法人 日本サッカー協会(JFA)「指導者の役割と子どもの指導」

「ゲームは子どもたちのものである」というプレーヤーズファーストの考え方や、勝敗だけではなく、挑戦すること、できなかったことができるようになることを含めた育成年代の指導について参考にしました。

JFA「指導者の役割と子どもの指導」


FIFA Training Centre “Developing the player of the future.”

将来の選手に必要な力として、プレッシャーへの対応だけではなく、情報を分析して判断すること、状況に応じて判断を変えること、リスクを取ること、プレーを振り返って次へ生かすことなどを整理した育成資料です。

FIFA Training Centre「Developing the player of the future」


※本コラムは、上記研究・資料を参考にしながら、育成年代のサッカーに関わる一保護者としての経験や考えをまとめたものです。研究結果がすべての子どもに同じように当てはまることを示すものではありません。

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